2008年11月2日日曜日

研 究組織「R-GIRO」のトップである機構長には、学長に 就任していただいています。この「R-GIRO」は、日本が抱える緊急課題に特化して取 り組む、我が国初の研究機構であると自負しています。

産学官連携の最前線から 第10回「研究シンボルを創出する“R-GIRO”」◆
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前回、お話しましたが、「不退転の決意」で政策を推進することで、一気に研究パフ
ォーマンスが向上することがあります。今回、紹介する研究組織「立命館グローバル
・イノベーション研究機構(R-GIRO)」は、まさに“その政策”によるものです。

私が「不退転の決意」というのは立命館大学の学内予算から年間3億円を投じ、(1)
効果的で(2)機動力を重視した(3)政策提言型の(4)他大学に類をみない――研
究組織を目指したからです。そして、「R-GIRO」のトップである機構長には、学長に
就任していただいています。この「R-GIRO」は、日本が抱える緊急課題に特化して取
り組む、我が国初の研究機構であると自負しています。

21世紀の科学・技術は、これまでに破壊された地球環境や、枯渇しかけている資源の
回復を念頭に置くべきであり、そのためには自然との「共生」に向けて、革新を図ら
なければなりません。世界的にも「京都議定書」に基づいて、地球温暖化防止への本
格的な取り組みが始まっています。

立命館大学は1995年に、「地球市民のための私立大学であり続けるべく努力する」と
いう「地球市民宣言」を提唱しました。そして、この理念をさらに推し進めるべく、
新たな科学・技術の創成を目指す研究拠点として2008年4月に「R-GIRO」を設立しま
した。

「R-GIRO」は我が国の緊急課題である(1)エネルギー(2)材料資源(3)環境(4)
食糧(5)安全・安心(6)医療・健康――の6つの領域に特化し、科学・技術面から
の解決および異分野領域の融合から生み出される新領域の学術創成を目的としていま
す。また、私立総合学園の特徴を生かした、人文・社会科学系と自然科学系との融合
を強化し、21世紀の要請である「自然共生立国」の構築に貢献することも視野に入れ
ています。

特に同機構のアクティビティーにより、研究の政策重点化や、研究・教育の国際連携
ネットワーク構築が強化されるだけでなく、「科学・技術の創生提案」や「文理融合
の政策立案」が促され、未来を考える“絶好の好機”となります。若手研究者の育成
にとっても、大きな役割を果すものと考えています。少し“キザ”になるかもしれま
せんが、「立命館大学の“知への挑戦”を、R-GIROで是非とも成し遂げたい」という
ことです。

エネルギーと材料資源、環境、食糧、安心・安全、医療・健康という6つの領域は、
「第3期科学技術基本計画」の重点研究分野に含まれていることから、「R-GIRO」は
幅広い研究領域で“受け皿”として機能でき、さらに国家プロジェクトへの積極的な
提案も可能と考えています。とりわけエネルギーと資源の枯渇、食料問題などは、民
間企業でも取り組むべき重点課題なので、産学連携による民間外部資金の獲得という
面からも、大いに期待しています。

「R-GIRO」運営上のポイントは、年間3億円という学内予算の使い方です。課題設定
した6領域について、(1)異分野領域との融合などによる新学術領域の創成(2)次
世代を担う若手研究者の育成(3)新技術開発――などを積極的に支援する「学内提
案公募型研究プログラム(R-GIRO研究プログラム)」を実施するための原資としまし
た。採択した案件には、年間1000万円を5年間、計5000万円を支給しますが、その責
任者には戦略的な研究者の確保と拠点の形成を約束させました。国内大学では、破格
の待遇であり、立命館大学の「研究シンボルを創出していこう」とする決意の表れと
もいえます。

さらに「付帯義務」もあります。“積極的に”取り組む目標として(1)年1回は「立
命館GIROシンポジウム」を開催し、研究成果を積極的に外部へ発信する(2)国家プ
ロジェクトに結びつくような先導的な研究で「グローバルCOEプログラム」や「科学
研究費補助金S、A」などの競争的大型研究資金に積極的にエントリーする(3)「R-
GIRO研究プログラム」で得られた研究成果を学内のみならず、産業界へも積極的に普
及推進し、組織的に取り組める大型産学連携を狙う(4)大学生のみならず、初等・
中等・高等教育に学ぶ生徒への啓発活動を積極的に実施する――という4つの課題を
設定しました。

第1回「R-GIRO研究プログラム」では、学内から“選りすぐり”の応募が40件あり、
その中から12課題を採択しました。自然科学系を中心に、斬新な提案が数多く寄せら
れ、採択した12課題についても今後、さらに「選択と集中」によって精選・強化し、
「○○の研究だったら立命館大学」といわれるような、シンボル的な政策的重点研究
拠点を5拠点ほど設立していきたいと思っています。

この「R-GIRO研究プログラム」は、3年間継続して学内公募を行う予定です。3年後に
は、ポスト・ドクター(ポスドク)などの若手研究者が同プログラムも含め、大学全
体で100人を超えるので、「若手研究者による研究の活性化は間違いない」と確信し
ています。さて、ここで読者の皆さんには、「では、雇用したポスドクのキャリアパ
スはどうするのか」という疑問が湧くことと思いますが、その件については次回、詳
しくお話したいと思います。

最後になりましたが、「R-GIRO」では自然科学系から人文・社会科学系にまで、大き
く羽を広げる政策を進めていることころです。人文・社会科学系でも、“立命館大学
らしい”研究シンボルとなるような「研究領域設定」にチャレンジしています。

特に人文・社会科学系の研究者には、組織的な研究よりも個人的な研究を好む傾向が
あります。政策的に研究拠点化していくことには相当な困難が予想されますが、「R-
GIRO」のトップである学長の求心力があれば、「実現は可能」と大きな期待を抱いて
います。


立命館大学 研究部 次長
理工リサーチオフィス 課長
野口義文


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