2008年10月7日火曜日

シリンダにらせん状にフィンをつけることで、数百回転で大きな揚力を発生できることを見つけた



エコプロダクツ

風力発電で「地産地消エネルギー」を・MECARO――エコうまに乗れ!(6)

滝順一(たき・じゅんいち)
日本経済新聞編集局科学技術部編集委員。ワシントン支局、大阪編集局経済部編集委員などを経て07年より現職。地球環境問題などを担当している。ちなみに「エコうま」とは、エコな勝ち馬に乗って、環境理想郷「エコトピア」を目指そう、というメッセージをこめた

 従業員14人の小さな企業が世界にも例がないユニークな風力発電機の実用化に挑んでいる。秋田県潟上市にあるMECARO(メカロ)。鳥の羽根のようなプロペラ翼ではなく、円筒状のパイプでできた風車がゆっくりと回る。海外で生まれ長らく埋もれてきた技術を実用レベルにまで改良した村上信博社長は「秋田発の地産地消のエネルギーを目指す」と話す。


 ――プロペラ型の羽根でないのにどうして回転するのか。

「円筒状のパイプ(シリンダ)をモーターで回転させる。回転しながら向かい風を受けると風の流れに直角方向に揚力が発生し弱い風でも風車が回り始める。回転をかけた野球のボールがカーブするのと似た原理だ。『マグナス効果』といって150年も前にドイツの科学者が発見したが、長く埋もれていた」



MECAROの村上信博社長

 ――羽根を回すことで電力を消費し、発電機としては効率が悪くなるのでは。

「まさにその理由から実用化できないと考えられてきた。単純な円筒でマグナス効果を出そうとすると毎分何千回転もさせねばならず非効率だった。しかしシリンダにらせん状にフィンをつけることで、数百回転で大きな揚力を発生できることを見つけた。それでもシリンダの回転には電力を使うわけだが、マグナス効果によるより大きな利点がある」

「弱い風でも回るのと同時に、強風下でもシリンダの回転を調節することによってゆっくりと回り続けることができる。プロペラ型の大型風車は台風の時などは壊れないよう回転を止めざるを得ない。弱風でも強風でも安定した回転ができるのが強みだ。回転数がプロペラ型に比べて4分の1程度なので騒音も少なく、鳥が羽根に衝突する『バードストライク』も起きにくい」


 ――運転と受注の実績は。


MECAROの風車。シリンダにらせん状にフィンをつけたのが特徴
《クリックすると拡大します》

「新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の補助金を使って、実用レベルの風車を大潟村内に設置し実証試験をしてきた。また米航空宇宙局(NASA)がカリフォルニアに持っている航空機開発用の大型風洞に風車を持ち込んで、風速50メートルの試験をして無事クリアした」

「今年1月からは大潟村にある物産館の駐車場脇にも設置し訪れる人に見てもらうと同時に運転データを集めている。直径11.5メートルの風車で発電能力は12キロワットと小さいが、年間平均風速が6メートルの条件下で標準家庭9軒分の3万キロワット時が供給できる。現時点(6月末)で受注しこれから製作段階に入るものが2台。引き合いは多いものの、まったく新しい技術なのでユーザーが導入に慎重になるのは理解できる」



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